Research Abstract |
当該研究の目的である「海底洞窟生微小二枚貝の酸素同位体比から探る過去7,000年間の黒潮の動態」を完遂するには,7,000年前までに達する堆積物コア試料の採取が必要である。そこで,今年度の調査では,延べ7日間を堆積物コア試料の採取と洞窟内の地図作成に費やした。その結果,計8本のコア試料を得た。そのうち,最も長い試料は,長さ233cmで直径6cmである。この試料の最基底からは保存状態の極めて良好な二枚貝1個体が産し,その^<14>C年代測定を依頼した。その結果,暦年代で7,160±100年前の値が得られた。したがって,本研究課題の遂行に必要な堆積物コア試料を得ることができた。現在,このコア試料に関して,厚さ1cmごとに堆積物をスライスし,計233試料に分け,炭酸カルシウム含有率の測定は終了し,約2,000年前に堆積した大洞窟軽石層を表層から深さ53cmから検出した。また,7,160±100年前から6,410±110年前にかけて炭酸塩含有率が87%から92%まで増加する明瞭な傾向を捉えた。これは新知見であり,その原因を現在検討している。 当該研究の目的の一つに,暦年代で約5,500年頃の堆積物の「淡黄色石灰泥」から「灰白色石灰泥」の急変の原因の解明を挙げた。上記のコア試料からは「淡黄色石灰泥」が見つからなかった。この結果と,今年度作成した洞窟内の詳細地図に基づくと,「淡黄色石灰泥」は大洞窟内の一部にしか分布しないことが判明した。これは,「淡黄色石灰泥」の堆積過程を考える上で重要な拘束条件となる。現在,本コア試料に関して,堆積物の粒度分析及び微小二枚貝の抽出を行なっており,それらの作業終了後,酸素同位体比測定を実施する。
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