Research Abstract |
本年度は,主として鉱化作用を伴う高温濃度流体の解析と,水-塩系地殻流体の誘電率の解析方法の検討を行った。 1.ペルー国パルカ鉛-亜鉛鉱床の鉱化作用に関係したと考えられる花崗岩類より,塩濃度とガス成分の異なる幾つかの流体包有物のトレイルを見いだした。ラマン分光分析による各トレイルの流体包有物の組成の詳細な検討により,塩相当濃度が60〜70重量パーセントに及ぶ極めて高塩濃度の流体の存在を明らかにし,更に鉱化流体が沸騰した可能性を示した。また,直接鉱化作用に関係した流体包有物のトレイルを確認することが出来た。 以上の成果を,平成21年度地球惑星科学連合大会(5月,千葉),資源地質学会(6月,東京)及びGoldschmidt-2009(6月,スイス)にて発表する予定である。 2.高温・高圧の水-塩化ナトリウム系地殻流体の誘電率を,石英の溶解度から求めることが出来ることを,理論的に明らかにした。この理論に基づき,これまで報告されている圧が0.5〜2キロバール,温度が300〜500度の範囲の様々な塩濃度流体中の石英の溶解度測定実験の約200件の結果から,1モルの塩化ナトリウム濃度の流体の誘電率を外・内挿により求めた。その結果,0.5,1及び2キロバールの塩水の誘電率は,温度降下に伴い,それぞれ350,400及び420度付近で急激に上昇することを明らかにした。また,この塩水の誘電率の上昇は,高温から低温にかけての塩化ナトリウムの電離によるものである可能性が示された。 以上の成果を,平成21年度地球惑星科学連合大会(5月,千葉)及びGoldschmidt-2009(6月,スイス)にて発表する予定である。
|