Research Abstract |
今年度は,メタ位に炭素-ハロゲン(C-X,X=Br,Cl)結合を有するベンゾフェノン(BM8PおよびCMBP)のω解離反応について,レーザー閃光光分解法および量子化学ΦFT)計算を用いた解離の様子をシユミレーションする手法を用いて探索し,その反応性の支配要因をあきらかにすることを目的として研究を行った。 1,直接励起時に,C-X結合が解離し,m-ベンゾイルベンジルラジカルBMR)がBr体でもCl体でも遊離することが実験的に明らかに成った。それぞれのラジカル生成の量子収率は0.25および0.085と決定された。この反応のCIDEPを測定したがシグナルが現れなかったので直接励起事の解離反応は最低励起一重項状態で起きている事が明らかになった。 2,アセトンを三重項光増感剤として用いて,BMBPおよびCMBPの三重項における反応性を検討した。三重項アセトンからのエネルギー移動によりCMBPはその三重項が生成することが観測され,三重項では解離反応が起きていたいことが判った。一方BMBPではBMRの生成が観測され,ラジカルの生成量子収率が0.4と決定された。 3,DFT計算により,励起一重項と三重項の状態エネルギーを炭素-ハロゲン原子間の距離の関数として計算を行った。励起一重項でのハロゲン解離の活性化エネルギーはClよりBr体がはるかに大きく解離の量子収率の違いは,活性化エネルギーの大きさの違いであることが判った。一方CMBPの三重項では解離反応は起きなかった。これは活性化エネルギ」の違いではなく,CMBPの結合エネルギーが三重項エネルギーよりも大きいことに起因することが判った。以前に報告したパラ置換体の量子収率と比較したが,同じハロゲン原子同士の置換位置による解離量子収率の違いは活性化エネルギーの違いではなく,炭素原子場のスピン密度の違いで説明できることが明らかになった。
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