2007 Fiscal Year Annual Research Report
水和により誘起される過酸化ラジカルの分子構造と反応性に関する分光研究
Project/Area Number |
19550006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
住吉 吉英 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 助教 (50291331)
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Keywords | ラジカル / 分子間相互作用 / クラスター / マイクロ波分光 |
Research Abstract |
希ガス原子と2原子ラジカルから成るラジカル錯体、Ar-NOの分子間相互作用ポテンシャルを決定した。このラジカル錯体は、NOの電子状態が2重に縮重しているため、非常に複雑な振動回転構造を有することが特徴である。マイクロ波分光法を用いたAr-NOの回転スペクトルの観測は、1980年代に既に行われていた。しかしながら、従来の実効的なハミルトニアンを用いた解析では遷移周波数を再現することが出来なかった。今回、2重縮重した電子状態を考慮して、さらに大振幅振動運動がこのような電子状態に及ぼす影響を考慮した新しい解析手法を開発して適用することで、マイクロ波分光法の測定精度以内で、遷移周波数を再現することに成功すると同時に、分子間相互作用ポテンシャルを実験的に初めて決定した。この相互作用ポテンシャルは、窒素原子の核スピンに由来して、マイクロ波スペクトル中に現れる超微細構造も完全に再現することができる高精度のポテンシャル曲面である。今回新たに決定したAr-NOの分子間相互作用ポテンシャルと、以前決宗したAr-OHのそれとの比較を行った。これら2種類のラジカル錯体はAr-NOがT型構造が安定であるのに対して、Ar-OHは直線構造が最安定であるなど、相互作用ポテンシャルの形状に大きな違いがある。比較の結果、2つの錯体の相互作用ポテンシャルに見られる相違は、NOラジカルとOHラジカルの最高被占軌道の形状の違いとして、うまく説明できることを見出した。
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