Research Abstract |
1.single well, low barrier double well, double wellのproton transfer(PT)ポテンシャルが予想される,dibenzoilmethane(DBM), 1-benzoyl-6-hydroxyl-6-phenylfluvene(Fulvene), benzoicacid dimer(BA dimer)について,水素結合構造及びそのプロトンdynamicsおよびその溶媒効果の計測のため,^<17>O濃縮試料を用いた,種々の核磁気緩和時間の測定に加え,孤立状態との比較検討のため,abintioMO計算(MP2)を行った。その結果DBMでは,四塩化炭素中で,そのプロトンは2つの酸素原子のほぼ中間で非局在化しているのに対し,孤立状態(分子軌道計算の結果)では,明確にプロトンが局在化していることが判明し,溶媒の分極効果が,プロトン移動ポテンシャルに大きな影響を与えていることが示された。Fluvenにおいては,さらに多種の溶媒,温度における実験を進めた結果,アセトニトリルのような電子供与性に強い溶媒中では,そのPT速度は加速し,ニトロメタンの様な電子受容性の溶媒中では減速することが判明した。このことは,反応の過程で,移動プロトンと溶媒との相互作用が増大し,結果として,反応障壁の減少もしくは,トンネル相互作用の増大をもたらしたことによると考えられる。(成果は投稿中) 2.シッフ塩基の2つの互変異性体間の自由エネルギー差の異なる誘導体のN-15ラベル体を用いた,種々の核磁気緩和の測定を引き続き行い,そのプロトン移動速度が,置換基の電子的効果,あるいは,立体的効果によるN....O距離の圧縮の効果を極めて鋭敏に反映することに加え,2つの異性体間のわずかなエネルギー(数kJ/mol)の違いが,高エネルギー側の異性体のプロトンの非局在化をもたらすことを示した。(成果は投稿準備中) 3.ステアリン酸およびそのアルキル基に水酸基を導入した異性体において,おもに1H,13CNMRの測定から,多元水素結合集合体の生成を示すとともに,それらの構造が,プロトン移動をともなう特徴的構造を持つ多元水素結合ネットワークを形成することを示した。(成果の一部は公表済み)
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