Research Abstract |
分子がもつ対称性や結晶がもつ場の対称性は,実験的には主として構造研究や分光学的研究によって調べられてきた.しかし,バルクの熱力学的性質に対称性が劇的に反映されることが少なく,熱物性としてはあまり注目されてこなかった.一方,次元性の問題は磁性研究を中心に理論的に体系化されており,熱力学的性質についても研究が及んでいる.しかし,磁性を伴わない系の次元性については,実験的にもあまり注目されてこなかった.本研究では,対称性の問題が熱物性に顕著に現れる分子系を探索し,これを実験的に研究することを目的とした.また,その際,次元性も含めた対称性に注目した. 1)2,6ジクロロトルエン メチル基を部分的に重水素化した試料(合計4種)について,それぞれ0.35K〜300Kの範囲で熱容量を測定した.これには,研究室既設の緩和型熱容量測定装置および断熱型熱容量計を用いた.相転移は観測されず,メチル基の配向に関わるエネルギー準位を決定することができた. 2)ヨウ化メチル メチル基を部分的に重水素化した試料(合計4種)について,それぞれ0.35K〜300Kの範囲で熱容量を測定した.これには,研究室既設の緩和型熱容量測定装置および断熱型熱容量計を用いた.相転移は観測されず,エネルギー励起も観測されなかった.これは,極低温でメチル基の配向に関わる新奇ガラス状態が実現されたものである.
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