2007 Fiscal Year Annual Research Report
液/液界面ギブズ膜不均一構造の安定性に及ぼすドメイン線張力の役割解明
Project/Area Number |
19550021
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
瀧上 隆智 Kyushu University, 大学院・理学研究院, 准教授 (40271100)
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Keywords | ドメイン / 液 / 液界面ギブズ膜 / シンクロトロンX線反射率 / 線張力 / 自発的多重膜形成 / 溶媒-溶質相互作用 |
Research Abstract |
分子組織体は界面活性物質が分子間相互作用により単分子膜状に吸着した単層膜を基本とし、それが膜間相互作用で自発的に積層した多重膜構造を成している。そのため分子組織体の構造・性質の解明・制御には、その基本構造である液/液界面膜の微視的レベルでの構造解明が不可欠である。従来の研究において見出されたギブズ膜不均一構造では、静電斥力相互作用のような明確な斥力相互作用が存在しないにもかかわらず凝縮膜ドメインが融合することなく安定に分散している。よってドメインの分散安定性の理解には、ドメイン間の引力的相互作用に拮抗しドメインの自由エネルギーの上昇に寄与する力、すなわちドメイン線張力の存在を考えなければならない。本研究では(1)ドメイン線張力の測定、および(2)ドメイン分散安定性に及ぼすドメイン線張力の寄与の解明を目的とし研究を遂行した。 今年度は、ペルフルオロヘキサン(FC6)/水界面におけるハイドロカーボン(HC)アルコールの吸着膜構造を、米国・アルゴンヌ研究所におけるX線反射率測定により解析した。FC6/水界面においてHCアルコールはほぼ垂直に配向し、吸着膜の電子密度の値から固体rotator相の状態にあることが分かった。 HCアルコールのヘキサン/水界面吸着膜は凝固点直上の液体状態に近い構造であることを踏まえると、溶媒(FC6)-溶質(HCアルコール)間の弱い相互作用が溶質分子間の相互作用を強め、結果として分子が非常に密にパッキングした構造をとることが見出された。 さらに、ヘキサン/水界面におけるフルオロカーボン(FC)ジオールの吸着を界面張力測定による巨視的観点から研究を行った。FC鎖の剛直性および分子両端に存在する親水基の効果により、分子が界面に対して水平に配向した凝縮膜や、高濃度・低温度における自発的多重膜形成など、従来のギブズ膜では報告例のない極めて新規性の高い吸着膜状態を見出した。
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