2008 Fiscal Year Annual Research Report
液/液界面ギブズ膜不均一構造の安定性に及ぼすドメイン線張力の役割解明
Project/Area Number |
19550021
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
瀧上 隆智 Kyushu University, 大学院・理学研究院, 准教授 (40271100)
|
Keywords | ドメイン / 液 / 液界面ギブズ膜 / シンクロトロンX線反射率 / 線張力 / 多重膜 / 表面間力 |
Research Abstract |
分子組織体は界面活性物質が分子間相互作用により単分子膜状に吸着した単層膜を基本とし、それが膜間相互作用で自発的に積層した多重膜構造を成している。そのため分子組織体の構造・性質の解明・制御には、その基本構造である液/液界面膜の微視的レベルでの構造解明が不可欠である。従来の研究において見出されたギブズ膜不均一構造では、静電斥力相互作用のような明確な斥力相互作用が存在しないにもかかわらず凝縮膜ドメインが融合することなく安定に分散している。よってドメインの分散安定性の理解には、ドメイン間の引力的相互作用に拮抗しドメインの自由エネルギーの上昇に寄与する力、すなわちドメイン線張力の存在を考えなければならない。本研究では(1)ドメイン線張力の測定、および(2)ドメイン分散安定性に及ぼすドメイン線張力の寄与の解明を目的とし研究を遂行した。 今年度は、ヘキサン/水および空気/水界面におけるフルオロカーボン(HC)ジオールの吸着膜状態を、界面張力の高精度測定と熱力学理論解析より考察した。ヘキサン/水界面におけるフルオロデカンジオール(FC10diol)のギブズ膜では、分子が界面水平方向に配向し密充填した凝縮膜を形成し、溶液濃度の上昇および温度の低下・圧力の上昇に伴い、分子が自発的に積層した多重膜を形成することを見出した。一方、空気/水界面におけるフルオロオクタンジオール(FC8diol)ギブズ膜でも同様のギブズ膜シークエンスが確認されたが、ヘキサン/水界面に比べ多重膜での分子積層の程度が小さいことが判明した。この違いは多重膜を挟んで作用する表面間力がヘキサン/水系では斥力的であるのに対し、空気/水系では引力的であることで合理的に説明することに成功した。 さらに、ヘキサン/水界面におけるFC10diolギブズ膜に対するX線反射率測定から、水平配向凝縮膜よび多重膜の存在を実証することにも成功した。
|