2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19550029
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
一戸 雅聡 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 准教授 (90271858)
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Keywords | 高周期典型元素 / 常磁性化学種 / 有機ケイ素化合物 / ケイ素ラジカル |
Research Abstract |
典型元素ラジカルではスピン中心となる原子のs軌道、p軌道がその役割を担うが、炭素、窒素、酸素などの第2周期元素では主量子数が同じであるためそのサイズは類似したものになり、原子核の電荷の違いによる若干の軌道サイズの差があるに過ぎない。一方で、主量子数が異なる高周期典型元素では根本的に軌道サイズが異なっており、分子内、分子間におけるスピン間の相互作用も自ずと変化すると考えられる。本研究ではフェニレン基を連結子に用い、複数のケイ素ラジカル(シリルラジカル)中心を同一分子に組み込んだ化学種を合成し、その構造、スピン状態について検討した。 極めて嵩高いtert-ブチルメチルシリル基を二つ導入したブロモシラン部位をパラおよびメタフェニレン基に導入した前駆体の還元的脱臭素化反応により、対応するフェニレン架橋ビス(シリルラジカル)の合成を試みた。その結果、パラ体を良好な収率で合成することに成功し、X線結晶構造解析により結晶中では1重項ジシラパラキノジメタン型構造を持つことを明らかにした。一方、溶液状態では強い常磁性シグナルが観測されており、明瞭な核磁気共鳴シグナルを与えないなどの事実から、構造変化が容易な溶液中では3重項状態との平衡混合物として存在することを示唆する結果を得た。一方、メタフェニレン架橋ビス(プロモシラン)の還元反応では一つのブロモシランユニットでの還元によりシリルアニオン中心を生成し、もう一方のブロモシランユニットでの脱臭素化反応が進行せず、同方法では対応するメタフェニレン架橋ビス(シリルラジカル)が得られないことが分かった。
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