2008 Fiscal Year Annual Research Report
アセチレンを介して結合したマルチフェナレニル化合物の合成と電子構造解明
Project/Area Number |
19550039
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
久保 孝史 Osaka University, 大学院・理学研究科, 教授 (60324745)
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Keywords | 強相関電子系 / 磁性 / 光物性 / 有機導体 / フェナレニル / アセチレン / シングレットビラジカル |
Research Abstract |
フェナレニルを基盤とする一重項ビラジカル種に関し、アセチレンをリンカーとして用いた新規分子(1)ならびに縮合多環型新規分子(2)をそれぞれ合成し、結晶構造解析や分光学的測定、ならびに電気化学的測定を用いて、非局在型一重項ビラジカル種の不対電子間相互作用に関する知見を得た。化合物(1)はビラジカル性が17%と小さいにもかかわらず、結晶中で不対電子の分子間相互作用が認められ、温度とともにそれが徐々に増加することが結晶構造解析で明らかになった。この結果は、分子内と分子間で共存する不対電子問相互作用は、温度という外部因子でその割合が徐々に変化することを示唆するものである。また化合物(2)はビラジカル性が68%と非常に大きいことから、非常に強い不対電子の分子間相互作用が働き、最長吸収波長の遷移方向が分子間方向に向くという現象が確認された。すなわち化合物(2)は閉殻構造が書けるにもかかわらず、分子集合状態では不対電子問相互作用は分子内よりも分子間の方が大きいことがわかった。一方、フェナレニルを1分子内に3つ含む、二重項トリラジカル種(3)の合成にも着手した。化合物(3)は、これまでに確立してきた一重項ビラジカルの化学をマルチラジカルの化学へと拡大するものであり、骨格の新規性ならびに概念の新規性がともに大きい。多段階合成により化合物(3)の合成に最近成功し、ESRによる検出にも成功した。今後は結晶単離を目指し、固体物性への展開をはかる。 以上、フェナレニルを基盤とするビラジカル、ならびにマルチラジカル分子の合成の物性評価を通じて、分子内の不対電子問相互作用が中程度の化学の確立を行った。
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Research Products
(43 results)