2008 Fiscal Year Annual Research Report
キラルリン酸触媒を用いる不斉反応の立体制御因子の解明と遷移状態のデータベース化
Project/Area Number |
19550047
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
安藤 香織 Gifu University, 工学部, 教授 (70211018)
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Keywords | 分子軌道計算 / 立体選択性 / 遷移状態構造 / 不斉Friedel-Crafts反応 / 汎密度関数計算 |
Research Abstract |
インドールとイミンとのFriedel-Crafts反応は3,3'-p-NO_2Ph置換ビナフトールから得られるキラルリン酸1aにより触媒され、トルエン中室温10分でR体が96:4 (92%ee)の選択性で得られている。この反応の反応機構を明らかにするために分子軌道計算(B3LYP/6-31G*)を行なった。触媒のコンフォメーション解析を行なったところ、オルト位のAr基の向きに関して4つのコンフォメーションが可能であった。一方のAr基はその芳香環プロトンがリン酸のP=O部分と水素結合しているのが安定で、もう一方のArはビナフトール酸素と水素結合している方が安定であった。イミンのプロトン化反応は自発的に起こる過程であり、その後インドールとC-C結合形成をおこしてσ錯体が生成する。イミンのプロトン化でプロトンを失った触媒のリン酸アニオンがσ錯体からプロトンを取り去り生成物を与え、触媒は再生される。反応の律速段階はC-C結合の生成であった。最も安定なR体を与える遷移状態構造TS1aの触媒部分はAの形を取っており、最も安定なS体を与える遷移状態構造TS1bの触媒部分はBの形であることが分かった。2つの遷移状態構造のエネルギー差1.41kcal/molからBoltzmann分布から生成物のR:Sを計算すると92:8となり、実験で得られた92%ee(96:4)とだいたい一致していることが分かった。反応の活性化エネルギーは9.26kcal/molで、室温10分で容易に起こる反応に対応している。触媒1aを用いるこの反応の立体制御機構を明らかにするために触媒1b(R=H)について現在検討を行なっている。触媒1bを用いると反応は室温で進行するものの反応時間が4時間と長くなり、立体選択性は失われる。パラ位ニトロ基の影響によると考えられる。今後、触媒1aと1bの比較により立体制御因子の解明を行なっていく予定である。
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Research Products
(11 results)