Research Abstract |
平成19年度は,S≡N結合とS=NH結合を備え持つスルファンニトリル配位子((HN=)Ph_2S=E-SPh_2(≡N),E=CH(1),N(2))と両端にS≡N結合を有する配位子(Ph_2S(=N-SPh_2(≡N))2,(3))を用いて,1)有価金属の高選択的分離誘導化剤,2)新規触媒,および3)新規発光性金属錯体としての利用を試みた。1)有価金属の高選択的分離誘導化剤の研究では,スルファンニトリル配位子1-3を抽出剤として,ポリエチレングリコール-硫酸ナトリウム水性二相系における各種金属イオンの溶媒抽出実験を行った。配位子1を抽出剤に用いた場合,pHが7-10の領域において,Co(II),Cu(II),Zn(II),Cd(II)イオンをほぼ定量的に抽出できることが分かった。次に,配位子2を抽出剤に用いた場合,配位子1よりも低いpH領域で,Co(II),Cu(II),Zn(II)イオンが,ほぼ定量的に抽出できることが分かった。配位子3の抽出挙動は,配位子1,2と大きく異なり,より酸性側での抽出が確認され,酸性側からFe(III),Cu(II),Zn(II),Co(II),Mn(II)の順で定量的に抽出された。2)新規触媒としては,中員環錯体を形成する配位子3を用いて,Co(II),Ni(II),Cu(II)およびPd(II)イオンの錯体を合成した。反応については,Pd(II)-配位子3錯体を用いたフェニルホウ素酸と臭化アリールとのカップリング反応を試みたところ,対応するビアリール体が得られることが分かった。3)発光性金属錯体の合成に関しては,配位子1-3と1,10-フェナントロリンとの混合Cu(I)錯体の合成に成功し,現在発光特性について検討している。
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