Research Abstract |
新しいパイ系化合物として,アントラセンをアセチレンまたはジアセチレンで連結した剛直環構造をもつ化合物を設計し,立体化学,分子構造,物性を中心に研究した.2つのアントラセンの1,8位をリンカーで連結した環状構造の内側にアルコキシ基を導入し,すでに報告したアルキル置換体と比較した.9-アルコキシアントラセンをもう一つのアントラセンユニットと連結し,Eglinton反応によりメトキシ,エトキシ体を合成した.キラルHPLCによりこれらの化合物のエナンチオマーを分割することに成功し,ラセミ化の障壁を決定した,立体的な嵩高さを反映して,メトキシ体はエチル体より速くラセミ化することが明らかにされた.新しい環状構造として,9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセンを単位構造にもつ環状オリゴマーを合成した.前駆体をEglinton反応により環化すると,環状二量体,三量体,四量体が得られた.X線解析とDFT計算により分子構造を調べ,環状二量体はほぼ平面,環状三量体は完全に平面,環状四量体はタブ形の構造をもち,9,10-アントリレン基は比較的容易に環骨格の回りに回転することができる.基本ユニットと同様に,これらの環状オリゴマーも強い蛍光性を示すことが明らかになった,環状三量体は溶液中で強い自己会合を示し,NMRの濃度可変測定と蒸気圧測定から会合定数を決定した.環の大きさと構造や物性との関連性を議論し,環状構造の内側の空孔を利用した分子認識の可能性を検討した.
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