2009 Fiscal Year Annual Research Report
チオラート配位子で連結した分子性多核金属錯体の構造制御
Project/Area Number |
19550061
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松本 剛 Nagoya University, 大学院・理学研究科, 助教 (50311717)
|
Keywords | 多核金属錯体 / チオラート / 金属クラスター / ニッケル錯体 / ホスト-ゲスト / 大環状 / [4Fe-4S]クラスター / 三座チオラート |
Research Abstract |
前年度に開始した三座チオラート配位子を用いた鉄スルフィド錯体の構築を今年度も継続して行った。[4Fe-4S]クラスターの3つの鉄に三座配位子として結合できるトリチオールTemp(SH)_3を用い、[Fe_4S_4(SEt)_4]^<2->との反応により[Fe_4S_4(SEt)(TempS_3)]^<2->(1)を合成し、これを出発物質としてヒドロスルフィド基をもつ[Fe_4S_4(SH)(TempS_3)]^<2->(2)およびスルフィドで連結されたダブルキュバン{[Fe_4S_4(TempS_3)]_2(μ-S)}^<4->(3)を合成し、またイミダゾール配位子(Im)をもつ[Fe_4S_4(Im)(TempS_3)]^-(3)やカルボキシラートを有する[Fe_4S_4(O_2CR)(TempS_3)]^<2->(4)を合成した。これらのクラスターのクラスターは生体内に存在する電子伝達体のモデル化合物として重要な意味をもつことから、その酸化還元挙動を電気化学測定によって明らかにした。その結果、ダブルキュバン3はアセトニトリル中で2段階の還元過程を示し、2つのキュバン間で相互作用が存在することがわかった。またその電位は1にくらべていずれも負側にシフトしており、これは3の負電荷が1に比べて大きいためと考えられる。また中性配位子であるイミダゾール配位クラスター3の還元波は1に比べて正側にシフトし、カルボキシラート配位クラスター4では3よりも負側であるものの、1よりも正側に観測された。この酸化還元電位は配位子の電荷と電子供与性を反映したものである。生体内では、電子伝達に方向性をもたせるために適切な配位子が結合していると考えられ、本研究のモデルクラスターを用いた検討によって、実際にその事実を実験的に明らかにすることができた。
|
Research Products
(12 results)