2009 Fiscal Year Annual Research Report
電子移動反応をプローブとしたイオン液体の配向緩和過程に関する研究
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19550062
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高木 秀夫 Nagoya University, 物質科学国際研究センター, 准教授 (70242807)
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Keywords | 溶媒配向緩和 / 化学反応 / 電子移動 / 活性化障壁 / イオン液体 |
Research Abstract |
化学反応の速度は基底状態から遷移状態に至るエネルギー変化と時間スケールによって支配されるので、本研究では、反応の活性化過程に対応するイオン液体の配向変化を速度論的パラメータとして表現できないかと考えて、実験を遂行した。一般的には、結合切断反応における活性化障壁は、いつでもその反応に関係する分子の結合エネルギーに関係すると誤解されがちであるが、実際には、結合の切断反応の活性化エネルギーは結合のエネルギーに直接関係しているわけではなく、各分子に特有の二次のJahn-Teller効果に関係するHOMOとLUMOのエネルギー差と、結合切断に関与する基準振動モードの有無に関係している(拙著:量子論に基づく無機化学[名古屋大学出版会、2010年】第10章参照)。 最初に(1-R-3-methylimidazolium bis(trifluoromethylsulfonyl)imide R=butyl, pentyl, and hexyl)中の熱異性化反応を支配する因子を特定する目的で実験を行った。3種類のイオン液体で観測された頻度因子は、通常の分子性溶媒で観測される値と比べて異常に小さく、イオン液体中で観測された速度定数は、極性溶媒中よりもむしろ、無極性溶媒中で観測された速度定数に近いことがわかった。極性の比較的大きなイオン液体の挙動はこのように特異なものであり、本研究が根拠にする考え方の正当性が確認できた。イオン液体中における電極電子交換反応の速度定数は、Kochiらの方法で決定した。アセトニトリル中においては、フェロセン/フェリシニウム対の自己交換反応速度定数は0.035cm^2 s^<-1>であったが、イオン液体中では0.25cm^2 s^<-1>まで遅くなることが確認された。今後は、非等温セルを用いた観測を続けることにより、頻度因子の決定とその由来についてさらに深く検討する予定である.
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Research Products
(5 results)