2010 Fiscal Year Annual Research Report
ペルオキソヘテロポリタングステートの構造制御-溶媒と陽イオンが担う役割とは?
Project/Area Number |
19550065
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
橋本 正人 和歌山大学, システム工学部, 教授 (50237947)
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Keywords | ポリオキソメタレート / 金属過酸化物 / 自己集積化 / 溶液内錯形成反応 / 結晶構造 / タングステン / 多核NMR / 構造制御 |
Research Abstract |
平成22年度の研究実施計画に基づいて研究を遂行し、以下の結果を得た。 1.P(V)をヘテロ原子としたタングステート系で、[(PO_4)(W_2O_3(O_2)_4)_2]^<7->なる組成を持つアニオンの単離結晶化と錯形成反応の解析に成功した。以前Ba^<2+>塩として得られていたが結晶の質が極めて悪かった。これをSr^<2+>塩とすることで結晶性の向上に成功した。錯形成反応では、極めて特異的な陽イオン(Sr^<2+>)依存性が明らかとなった。このアニオンは、酸化触媒としての利用可能性が期待される。 2.初年度から検討している二リン酸-タングステン系で、[(P_2O_7)_2(W_7O_<19>(O_2)_4(OH_2))_2]^<16->形成反応の^<31>P NMRによる解析を継続し、明瞭な陽イオン依存性および溶液条件によるアニオンの変化を明らかにした。 3.水/有機混合溶媒系にて、[(C_6H_5PO_3)Mo_2O_2(O_2)_4]^<2->の合成と単離結晶化、構造決定および錯形成反応の検討に成功した。また、酸化反応特性も検討した。これは水溶液系ではうまく合成できず、有機溶媒の存在がアニオン形成と合成とに重要であることを明らかにした。 4.二リン酸-モリブデン系において、[Cs_2(P_2O_7)_2(MoO(O_2)_2)_2(Mo_2O_2(O_2)_4)_2]^<6->の単離結晶化と構造解析に成功した。また、^<31>P NMRによる検討でアニオン形成に対するCs^+依存性を見出した。 四年間の研究を通し、多くの反応系で溶媒によるアニオン形成のコントロールや、陽イオンの種類によるアニオン構造の制御が可能であることが明らかとなった。ペルオキソ基の不安定さに基づく反応条件制御や再現性確保の困難さによる問題はあるものの、ペルオキソヘテロポリタングステート構成についての多くの重要な情報が得られた。
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