2007 Fiscal Year Annual Research Report
金属への配位により誘起された不斉リン中心の異常立体反転現象の解明
Project/Area Number |
19550067
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
三吉 克彦 Hiroshima University, 大学院・理学研究科, 教授 (60033924)
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Keywords | 3級リン配位子 / 多座リン配位子 / 環状リン配位子 / Ag^+イオン / 立体反転障壁 / フェロセノホスフィン |
Research Abstract |
リン配位子は、室温においてはリン中心で立体反転を起こさないことから、3級ホスフィンを光学分割したり、これを用いた光学活性金属錯体触媒の合成を可能にしている。しかしながら、最近申請者は、常温でも3級ホスフィンが反転する極めて稀な例を見出した。この現象は、次のような観点から興味深い。1)室温で3級ホスフィンが反転したことを明確に報告した例は無く、この未知の現象の原因を明らかにする科学的意義は大きい。2)室温においてリン中心の反転が誘起できれば、化学平衡により望みの異性体へ誘導する道が開ける。本研究では既に反転現象を見出している3種の異なる系について、多角的観点からその原因と機構を検討する (-PPh-C_5H_4FeC_5H_4-)n(n=2,3)を合成し、2量体(n=2)のsyn体とanti体および3量体(n=3)のC_3体とC_s体(n=3)の各異性体を単離した。これらの異性体間のリンの立体反転障壁を約26kcal/molと見積もった。この大きな障壁のために、各異性体は、単独では室温で異性化を起こさなかった。しかしながら、CH_2Cl_2を溶媒としてAg^+イオンと反応させるとリンの立体反転を伴う異性化が室温でも速やかに進行した。リン中心が遷移状態でsp^2混成を取る際にAg^+イオンが配位できることが、反転障壁を減少させる原因であると推定される。
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