2008 Fiscal Year Annual Research Report
金属への配位により誘起された不斉リン中心の異常立体反転現象の解明
Project/Area Number |
19550067
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
三吉 克彦 Hiroshima University, 大学院・理学研究科, 教授 (60033924)
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Keywords | リン配位子 / 立体反転 / 1,8-置換ナフタレン / 白金2核錯体 / 異性化反応 |
Research Abstract |
ナフタレンの1,8位をPhP-PPhで架橋した化合物(NaphPPと略)を合成した。この2座リン配位子では、2つのリン上にPh基がそれぞれ1つづつ結合しており、その相対配置により、trans体とcis体が存在する。このうちtrans体の方がcis体よりも熱力学的に安定であり、実際にこの配位子を合成すると、trans体:cis体=8:1の比で得られる。このうち、trans体については以前単離に成功しているので、本年度はcis体の単離を試みた。その結果、アルミナカラムを用いることで僅かながらではあるが、cis体の単離に成功した。 得られたNaphPPのうち、trans体を0価のPt(PPh3)4と反応させると、NaphPPと白金が3:2の比からなる2核錯体〔Pt2(NaphPP)3(PPh3)2〕が得られた。注目すべきことに、合成に用いたtrans体は、室温でcis体に異性化しており、これにより2つの白金中心を架橋していた。freeの配位子は、室温で全く異性化しないので、この反応は金属への配位によって誘起されたものである。一方、2価のPtCl2(cod)と反応させたところcis体は0価の場合と同様複数のNaphPPが架橋した2核錯体Cl2Pt(NaphPP)2PtCl2を与えた。これに対し、trans体は、ポリマー状の高分子錯体を与え、trans体からcis体への異性化は起こらなかった。金属の酸化数により異性化の挙動が異なる点は、反応のメカニズムを考える上で、大変興味深い結果である。
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