Research Abstract |
本研究では,外部刺激(温度,結晶に印加する応力,包接されるゲスト分子の種類や数の変化など)による結晶構造変化を分子動力学(MD)シミュレーションによって再現し,それによって引き起こされる結晶内微小空間の構造変化を定量的に解析する。さらに,ゲスト分子が感じるポテンシャル場が,結晶内微小空間の変化によってどのように変化するかを,MD法,および,量子化学計算により解明する。人為的に結晶構造を変化させることにより微小空間の構造変化を誘起することができれば,結晶内微小空間の機能性を自在にコントロールすることが可能になる。これを実現するためには,どのような外的要因の変化を与えれば,どのような微小空間におけるポテンシャル場の変化が生ずるかを,分子レベルから定量的に解析する必要がある。本研究は,この関係を明らかにするものであり,結晶内微小空間の機能材料としての応用の道を拓くものである。 平成19年度は,まず,計算環境の整備を進めた。研究室で保有するクラスター型並列計算機システムの基幹部品を最新のものに入れ替え,大幅な性能改善を図った。ソフトウエアについては,申請者が独自に開発したPAMPSを使用する。これにより,高分子/低分子混合系の分子シミュレーションを,並列計算機上で効率的に実行する環境が整った。次に,立体規則性ポリメチルスチレンの各種包接結晶を取り上げ,単結晶モデルについてMDシミュレーションを行い,結晶の安定性を調べた。結晶中に包接されたゲスト分子をすべて取り除くと結晶は崩れてしまうが,一部のゲストを残すことにより結晶構造が安定に保たれることが明らかとなった。この場合,ゲストの抜け跡が大きな空孔として残存する。得られた結晶構造に対して自由体積のクラスター解析を行い,結晶内微小空間の構造を定量的に解析した。
|