Research Abstract |
光エネルギー変換系では,太陽光エネルギーのより効率的な利用を図る観点から,利用波長域の長波長化に関する検討が活発に行われている.本研究代表者はp/n型有機二重層フィルムが広範な可視光に応答する光機能界面となることをこれまでに見いだしており,それを踏まえて,高効率固/液界面の創出に関する検討を行った. 有機半導体材料を探索する一環として,高分子半導体であるポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT,p型半導体)を,フェニル-C_61-酪酸メチルエステル(PCBM,n型半導体)と組み合わせて用いた.スピンコート法により調製したフィルムは光アノードとして顕著な特性を示した.フィルム作製後に加温を施したり,さらに,フィルム表面に分子触媒を結合する方法で,より効率的な固/液界面に改良できることが明らかとなった. また,ペリレン誘導体(PTCBI,n型半導体)/無金属フタロシアニン(H_2Pc,p型半導体)系(光アノード)においては,1×10^<-3>Pa程度の真空度及び120℃の条件を採用して蒸着フィルムの作製を行うと,固/液界面における酸化反応速度がこれまでの結果に比べて約2倍程度向上した. 上記のPTCBI/H_2Pc系は,一般に固/液界面における電荷授受過程が律速段階であるが,それとは異なり,フラーレン(C_<60>,n型半導体)/H_2Pc系(光アノード)は,照射光量により律速段階が変化することが明らかとなった(低光量条件ではキャリア発生過程(固/固界面),高光量条件では電荷授受過程(固/液界面)).現時点では,真空度々基板温度の制御による固/液界面の高効率化は明らかとなっていないが,特に50℃の条件で作製したフィルムは固/固界面の改良により室温条件で作製したものと比較して,約2.5倍程度量子収率(52%;測定波長,500nm;照射光量,0.64μWcm^<-2>(低光量条件))が向上した.
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