2009 Fiscal Year Annual Research Report
タンデムクライゼン転位による超分子錯体の構築と機能開発
Project/Area Number |
19550132
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
平谷 和久 Utsunomiya University, 工学研究科, 教授 (40343082)
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Keywords | 超分子 / 分子認識 / タンデムクライゼン転位 / アミドクラウノファン / ボロン錯体 / ロタキサン / 蛍光発光 / トリポーダンド |
Research Abstract |
我々の開発したタンデムクライゼン転位の前年度までの成果は昨年度インパクトファクターが17を超える英国化学会のChem.Soc.Reviewsにまとめたものが掲載され、その重要性を世界的に認めてもらえるような成果として発表することができた。 今年度は一分子中に複数のタンデムクライゼン軽位を行う部位を導入し、カテコール部位を発生させた化合物を合成した。カテコール部位を有する非環状化合物はTi(IV)と選択的に反応し、3:1の超分子錯体を形成することをx線構造解析、核磁気共鳴装置などにより明らかにすることができた。トリポーダンド型の化合物では3つの末端基とTi(IV)との反応により1:1の錯体を形成し、錯体の空孔内にカチオンを取り込むことを見出した。また、長鎖アルキル基を持つ非環状アミドの2次元表面への集合構造をSTMにより観察することで、タンデムクライゼン転位前後の構造に大き変化があることが明らかになり、その集積の状態を制御する手段として本研究での転位反応が利用できることを明うかにすることができた。構造変化の主たる原因は水酸基の発生による分子内水素結合であることを核磁気共鳴装置や赤外分光法などにより明らかにした。 大環状化合物のタンデムクライゼン転位生成物についてはボロン錯体のさらなる展開を行い、環の大きさの変化、カチオンの種類及びその濃度などの検討からリチウムイオン添加による蛍光強度の飛躍的な増大がアニオン性ボロン錯体とのイオン対の接近の度合いによるものであろうという結論を得ることができた。 これらの結果は、タンデムクライゼン転位により発生する複数の水酸基の特性を利用して高度な機能を有する化合物を構築する手段としてこの方法が極めて有効であるということを示すことができた。
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