2007 Fiscal Year Annual Research Report
自己分極ドナーを用いた新規π電子系分子導体の開拓とその物性
Project/Area Number |
19550133
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮崎 章 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 助教 (40251607)
|
Keywords | 分子性固体 / 有機導体 / 水素結合 / π-d相互作用 / 分子磁性体 |
Research Abstract |
初年度は中性分子TTF四角酸イソプロピルエステル単結晶の電気伝導度の圧力依存性、ならびに光伝導の可能性を中心に検討を行った。本物質は対イオン系を含まない単一成分系にもかかわらず電気伝導度を有する特徴ある物質である。外圧の印加に従い室温電気抵抗率は単調に減少し、常圧から12kbarまでの圧力範囲でほぼ一桁の電気伝導度の上昇が見られた。一方各印加圧力における抵抗の温度変化から求めた活性化エネルギーは圧力依存性を殆ど示さない。本物質の結晶中での電気伝導経路はカラム状に積層したTTF部位と考えられるが、伝導度の上昇にもかかわらず活性化エネルギーがほぼ一定値を取ることは、キャリアの発生機構が分子内過程、おそらくはTTF部位から四角酸部位への電荷移動によるものであることを示唆している。また本物質は溶液中で520nm付近に上述の電荷移動過程に帰属される吸収極大を示すが、この波長に相当する市販の緑色高輝度LED光を照射すると数%の伝導度の上昇が観測された。光照射による温度上昇はほぼ無視できる値であったため、光照射による電荷移動によりTTFカラムにキャリア注入が起こったものと考えられる。 一方TTF-四角酸系を取り扱う過程で明らかになってきた本分子の不安定性・一般的有機溶媒への高すぎる溶解度といった不利な要因を解消し、かつドナー性の向上を図ることを目的として、TTF部位の水素原子を全てメチル基で置換したMe_3TTFsq^iPrを合成した。予備的な結晶構造解析の結果、本物質においても結晶中でTTF部位がカラム状に積層していることを確認した。現在このエステル分子の物性測定に耐えうる大きさの単結晶作成条件およびラジカル塩の作成条件をそれぞれ検討している。
|