2008 Fiscal Year Annual Research Report
自己分極ドナーを用いた新規π電子系分子導体の開拓とその物性
Project/Area Number |
19550133
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
宮崎 章 University of Toyama, 大学院・理工学研究部(工学), 准教授 (40251607)
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Keywords | 分子性固体 / 有機導体 / 水素結合 / π-d相互作用 / 分子磁性体 |
Research Abstract |
中性分子TTF四角酸イソプロピルエステル系について、これまでに得られた知見を総括した。本物質は対イオン系を含まない単一成分系にもかかわらず電気伝導度を有する特徴ある物質である。外圧の印加に従い室温電気抵抗率は単調に減少し、常圧から12kbarまでの圧力範囲でほぼ一桁の電気伝導度の上昇が見られた。またこの分子は溶液中で中程度のソルバトクロミズムを示すが、これはHOMOがTTF部位、LUMOが四角酸部位に局在していることから、光吸収によるπ-π^*遷移に伴い電荷の再配置が起こり、励起状態としての電荷分離状態のエネルギーが溶媒の極性、溶媒-溶質間の水素結合形成により変化するためであると結論付けられた。本物質の結晶中での電気伝導経路はカラム状に積層したTTF部位と考えられることから、これらの実験結果はTTF部位から四角酸部位への電荷移動によるものであることを示唆している。また本物質は溶液中で520nm付近に上述の電荷移動過程に帰属される吸収極大を示すが、この波長に相当する市販の緑色高輝度LED光を照射すると数%の伝導度の上昇が観測され、光照射によるTTFカラムへのキャリア注入が示唆される。以上の結果を国際学会International Symposium on Molecular Materials (Molmat2008)において発表し、NewJ.Chem.上で出版した(いずれもinvited)。 10月から東京工業大学から富山大学へ異動したため、本年度後半は新任地である富山大学における実験室等の研究環境の整備に重点を注いだ。
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Research Products
(4 results)