2010 Fiscal Year Annual Research Report
自己分極ドナーを用いた新規π電子系分子導体の開拓とその物性
Project/Area Number |
19550133
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
宮崎 章 富山大学, 大学院・理工学研究部(工学), 准教授 (40251607)
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Keywords | 分子性固体 / 有機導体 / 水素結合 / π-d相互作用 / 分子磁性体 |
Research Abstract |
テトラチアフルバレン(TTF)四角酸イソプロピルエステル(TTFsq^iPr)およびそのジメチル置換体(Me_2TTFsq^iPr)、トリメチル置換体(Me_3TTFsq^iPr)を合成し、物性を系統的に比較検討した。TTF部位に導入したメチル基の数が増えるに従い酸化電位は低下し、550nm付近に見られる強い分子内電荷移動吸収の波長は増大した。これはTTF骨格に電子供与性置換基を導入していくに従い、分子のTTF部位に局在しているHOMOのエネルギーが上昇する一方、四角酸部位に局在しているLUMOのエネルギーは変わらないためと説明できる。またラジカル塩(Me_nTTFsq^iPr)MCl_4(n=2,3;M=Fe,Ga)の結晶中ではドナー分子カチオンラジカル2分子がface-to-faceダイマーを形成し、四面体アニオンがS…Cl接触によりこれらのダイマー問を架橋した構造をとっている。いずれのドナーのGaCl_4^-塩とも非磁性であり、ラジカルダイマーが一重項状態を形成している。一方FeCl_4^-イオンでは鉄スピン間に反強磁性的相互作用が認められた。FeCl_4^-イオン間にはCl…Cl接触が認められないことから、ドナーラジカルダイマーを介した超交換相互作用が働いていると解釈される。さらに無置換TTFsq^iPrのFeCl_4^-塩では鉄スピン間に強い反強磁性的相互作用が認められたが、この試料はGaCl_4^-塩と同型構造をとる1:1塩(TTFsq^iPr)FeCl_4^-に加えて、構造未知の2:1塩(TTFsq^iPr)_2FeCl_4^-が混入しており、後者の磁性が支配的であることが明らかになった。
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Research Products
(4 results)