2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19550148
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
太田 浩二 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 光技術研究部門, 研究グループ長 (20356637)
|
Keywords | 光物性 / 二光子吸収 / 非線形光学 / 計算化学 |
Research Abstract |
本年度は、前年度から取りあげてきたTPEB分子のような二次元的に広がった分子の二光子吸収(TPA)特性に関して、実験的に得られたTPA特性を支配する要因を明らかにすることを目的として、その構造と特性の相関を、計算化学の立場からさらに詳細な解析を行った。計算からTPA特性は、分子全体の対称性及び置換基の位置に大きく依存することが分かった。TPEBのMOは互いに交差する二つのBPEBのMOの一次結合で表せることが分かった。中心対称的なTPEBの内、すべての末端基をドナー基で置換したTD-TPEBでは交差するD-π-D型のBPEBのHOMO-LUMO遷移は一光子許容で、二光子禁制である。そのためTD-TPEBのHOMO-LUMO遷移に近い低いエネルギー領域には二光子吸収許容な遷移は出現しない。一方para-TPEBはD-π-D型とA-π-A型のBPEBが交差した形になっているため、D-π-D型、A-π-A型分岐内のMO間の遷移は、対応するBPEBでの遷移に似たものとなる。一方D-π-D型分岐からA-π-A型分岐へのTPA許容な遷移が比較的低いエネルギー領域に現れる。このことがpara-TPEBのTPAスペクトルをブロードなものとしていることが分かった。また、非中心対称的なTPEBでは、パリティ選択則がないため、原理的には全ての励起状態が一光子及び二光子遷移許容となる。しかしながら、一光子吸収が強いにも拘らず、二光子吸収を殆ど示さない励起状態があることが分かっていた。今回の解析の結果、これらが異なる遷移パスの遷移確率間の負の干渉効果によるものであることが明らかになった。この干渉効果は、多光子過程に特有な量子力学的な効果によるもので、これまでにも理論的予測はされていたものである。今回の理論解析の結果によって、我々の得た実験的な結果が、確かにそのような量子力学的な干渉効果の現れであることを初めて示すことができた。
|
Research Products
(5 results)