Research Abstract |
光合成は,十数億年前に完成したシステムであり無駄の無いエネルギー変換を行っているが,21世紀に予想される炭酸ガスによる地球温暖化,化石燃料の枯渇によるエネルギー問題,急激な人口増加による食料問題が包含されている反応システムである。本研究は,このシステムから多くの情報を得ることにより,光合成類縁錯体による水を酸化触媒する機能性Mn錯体と白金錯体の開発とそれらを用いたシステムの構築と反応機構の解明を行うことを目的としている。光合成のPSIIの4核Mnクラスターでは,水の4電子酸化を触媒し酸素が発生するが,本研究で合成したMn(III)錯体が水から酸素発生を触媒していることを明確にするために,先ず始めにモデル系(Ru(II)+Co(III)系)を用いた系で,H_2^<18>Oを用いて質量計により発生した酸素を測定した結果,質量数36の酸素が認められ,水から酸素への酸化が確認された。現在,Ru(II)+Mn(III)+Co(III)系について検討中である。また,光合成中の光励起種であるP680のモデル錯体として,現在,[Ru(bpy)_3]Cl_2を使っているが,P680はMg(II)錯体であるので,合成したMg(II)錯体の光特性を検討した。さらに葉緑体のPSIIが存在するチラコイド膜は,液晶性を示す分子2層膜でできており,その中にP680などの種々の触媒が配列されている。以前に,そのモデル錯体として長鎖アルコキシ鎖を持つVO(IV),Ni(II),Cu(II)錯体を合成し,新規な液晶構造を持つことを報告したが,今回,Pt(II)錯体を合成し,その液晶特性と溶液内挙動を検討した結果,発光する液晶性錯体であることが認められた。
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