Research Abstract |
バイオポリエステルの生分解において,分解菌を培養しながらの分解菌接着および基質分解の重量分析をリアルタイムで可能にするために,菌培養槽と水晶発振子マイクロバランス(QCM)を組み合わせた循環システムを,昨年度に引き続き開発した.攪拌式培養槽から菌体を含む液体培地を,濁度モニター(UV検出器)を経てポリエステルフィルムを装着したQCMフローセルに,ペリスタポンプを介して循環させるシステムを試作し,テストを実施した.培養条件下では,培養槽のエアレーションによって発生する気泡の循環系への混入を完全に抑制することが難しく,また長時間の培養を行った場合には流路への培地等の吸着が生じ,さまざまな改良を試みたものの,濁度測定とQCM測定において安定的なデータを得ることは非常に困難であった. 一方,開発中の培養解析システムを評価するための標準試料として用いるための基本情報を収集することを目的として,操作性が良く特性も明らかな大腸菌を用い,循環システムから独立したQCM装置を使用して,バッチ式で大腸菌とバイオポリエステルとの相互作用評価を試みた.その結果,菌体の吸着によるフィルム重量の増加とフィルム表面の粘弾性変化を同時観測することに成功し,吸着した菌体を原子間力顕微鏡により観察することもできた.また,分解菌の作用を単純なモデル化により理解することを目的として、大腸菌の表面に膜タンパク質とリンカーを介してPHA分解酵素を発現させ,これらを用いて,バイオポリエステルフィルムと菌体との相互作用をQCMにより解析した.その結果,分解酵素修飾により大腸菌のバイオポリエステル表面への親和性が増大し,菌体のポリエステル表面への吸着が促進されることが判明した.
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