Research Abstract |
薄膜型有機トランジスタ(OTFT)において,半導体とゲート絶縁膜との接触面は疎水性の環境が好ましいことが知られている。一方で,高分子ゲート絶縁膜には基板への強い接着性も求められ,その観点からは高分子に極性基が必要となる。そのような要請を満たす高分子材料の候補として両親媒性ポリマーを挙げることができる。申請者らはこれまでに両親媒性交互共重合ポリイミドを合成してきており,このコポリイミドについて系統的に検討を行うことで高性能の有機トランジスタが得られるものと考えた。当初,両親媒性ポリマーとして,スルホ基を側鎖にもつ親水性ジアミンの使用を検討したが,成膜性に問題があったため,その使用を断念し,疎水部分のみを系統的に変えたコポリイミドについて検討を行うこととした。すなわち,長鎖アルキル基を側鎖に持つ芳香族ジアミンであるアルキル3,5-ジアミノベンゾエートと通常のポリイミド合成でよく用いられる(4,4'-ジアミノ)ジフェニルエーテルを用いて,種々の側鎖アルキル基をもった交互共重合ポリイミドならびに対応するランダムコポリイミドを合成し,それらのOTFT用ゲート絶縁膜としての機能を評価した。その結果,1)同じ側鎖鎖長のジアミンを用いた場合,交互共重合体の方がランダム共重合体よりも高いキャリア移動度を示すこと,2)鎖長が短いものよりも長いほうが移動度が高くなる傾向があることを見出した。また,移動度と接触角から求められた表面の極性の問に一定の相関があることも分かった。しかしながら,一部再現性に問題が見出されるなど,ポリマーの構造とOTFTとしての機能の相関についての一般則を得るという最終目標に関しては,今後更なる検討の余地を残した。
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