2007 Fiscal Year Annual Research Report
備前焼におけるイプシロン型酸化鉄の生成に関する研究
Project/Area Number |
19550199
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Research Institution | Kurashiki University of Science and the Arts |
Principal Investigator |
草野 圭弘 Kurashiki University of Science and the Arts, 芸術学部, 准教授 (40279039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福原 実 岡山理科大学, 工学部, 教授 (20150815)
高田 潤 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (60093259)
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Keywords | セラミックス / 備前焼 / 酸化鉄 / 模様 / 微細構造 / 色調 |
Research Abstract |
備前焼を代表する特徴的な赤色模様である「緋襷」は、非常にユニークな結晶成長を経由して形成することを明らかにした。これまでの研究は大気中にて行ってきたが、実際に備前焼が焼かれる登り窯内部の雰囲気は均一ではないため、備前焼粘土と稲ワラの反応について種々の酸素分圧下で熱処理を行った。N_2:O_2=99:1の混合ガス中で熱処理した試料表面はオレンジ色を呈した。この色は、「窯変」と呼ばれる備前焼模様のオレンジ色の部分に相当する。走査型電子顕微鏡観察結果から、この試料表面には赤色模様の要因となるコランダムにヘマタイトがエピタキシャル成長した粒子の生成が少ないためオレンジ色を示したと判断された。N_2:O_2=98:2の混合ガス中で熱処理した試料表面は「緋襷」の赤色を示した。これらの試料についてTEM観察を行った結果、イプシロン型酸化鉄(ε-Fe_2O_3)が針状のムライト(Al_6Si_2O_<13>)粒子に結晶学的方位関係を有して成長(エピタキシャル成長)することを見出した。N_2:O_2=99:1の混合ガス中で熱処理した試料中のムライトおよびε-Fe_2O_3の結晶学的方位関係は、c_m//b_εおよび(110)_m//(101)_ε(m:ムライト、ε:ε-Fe_2O_3)であり、3c_m〓b_εおよび5d_<(110)m>〓6d_<(101)ε>であることが分かった。一方、N_2:O_2=98:2の混合ガス中で熱処理した試料中のムライトおよびε-Fe_2O_3の結晶学的方位関係は、酸素1%の混合ガス中で熱処理した試料のそれとは異なり、c_m⊥(110)_εおよび(130)_m(または(310)_m))//(130)_εであることが分かった。ここで、(130)_mまたは(310)_mとしたのは、斜方晶構造であるムライトのaおよびb軸の特定がEDでは困難であるためである。ε-Fe_2O_3は次世代の磁性材料として近年注目されている材料である。ε-Fe_2O_3のエピタキシャル結晶についてはこれまで全く報告がなく、本研究にて世界で初めて見出した。本研究の成果は、ε-Fe_2O_3単結晶薄膜等の作製が可能であることを示唆している。
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Research Products
(6 results)