2008 Fiscal Year Annual Research Report
備前焼におけるイプシロン型酸化鉄の生成に関する研究
Project/Area Number |
19550199
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Research Institution | Kurashiki University of Science and the Arts |
Principal Investigator |
草野 圭弘 Kurashiki University of Science and the Arts, 芸術学部, 准教授 (40279039)
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Keywords | セラミックス / 備前焼 / 酸化鉄 / 模様 / 微構造 / 色調 |
Research Abstract |
備前焼粘土と稲ワラを種々の酸素分圧下で熱処理し、模様の色調、構成相および微構造について検討した。N_2中で熱処理した試料は黒色を示した。稲ワラと接触していた試料表面には、リン化鉄(Fe_3P)が生成することが分かった。この試料は、表面だけでなく内部も黒色であることから、試料内部について微構造観察を行った。その結果、グラファイトに覆われたα-Fe(α-Fe/C)がガラス中に生成していることが明らかとなった。稲ワラの燃焼により還元雰囲気となり、Fe_3Pおよびα-Fe/Cが生成し黒色となったと考えられる。N_2:O_2=99:1の混合ガス中で熱処理した試料表面はオレンジ色であった。この試料中には、コランダム(α-Al_2O_3)にヘマタイト(α-Fe_2O_3)がエピタキシャル成長した粒子およびイプシロン酸化鉄(ε-Fe_2O_3)が針状のムライト((Al,Fe)_6Si_2O_<13>)粒子にエピタキシャル成長した粒子が生成しており、これらの粒子の生成によりオレンジ色を示したと考えられる。N_2:O_2=98:2の混合ガス中で熱処理した試料表面は「緋襷」の赤色を示した。酸化性雰囲気下では、鉄イオンはFe^<3+>となり酸化鉄として析出するが、pO_2<2vol%ではムライトにα-Fe_2O_3としてエピタキシャル成長し、pO_2<2ではコランダムにα-Fe_2O_3としてエピタキシャル成長することが明らかとなった。 備前焼の稀な模様である「金彩」備前の発色構成相と微構造について検討した。これまで「金彩」模様は、炭素薄膜による干渉色でると考えられていたが、TEM観察の結果、模様部には配向性の良い100-400nm径のヘマタイトが生成していることが明らかとなった。また、これらの粒子の厚さは約160nmであった。「金彩」模様は、ヘマタイト薄膜の赤燈色に備前焼粘土と稲ワラの反応により生成したガラス相による散乱光が加えられた色であると考えられる。
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