2008 Fiscal Year Annual Research Report
イオン液体の分子間振動ダイナミクスと分子間相互作用:原子量効果
Project/Area Number |
19559001
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
城田 秀明 Chiba University, 大学院・融合科学研究科, 准教授 (00292780)
|
Keywords | 室温イオン液体 / フェムト秒光カー効果分光 / 分子間振動ダイナミクス / 粘度 / 分子性液体 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度作製したフェムト秒光カー効果分光装置を使って、分子性液体の分子間振動ダイナミクスの測定を開始した。当初予定した30種類よりもさらに多い40種類の分子性液体の測定を完了し、分子性液体の分子間振動ダイナミクスの全体的な描像を明白にしている。この膨大なデータを元に、世界に先駆けて分子間振動ダイナミクスのデータベース的な論文を現在執筆している。 さらに本年度は、昨年度に結果が得られた室温イオン液体のアニオンのXF_6^-の質量効果についても研究成果を論文とした(現在、Journal of Physical Chemistryに投稿中)。この実験で、構成イオンの原子量の効果は、質量よりもイオンの大きさによって生じるイオン間距離からくる分子間相互作用がイオン液体の粘度に影響を与えていることを明確にし、分子間振動ダイナミクスの運動と重原子置換効果が表れる時間領域(周波数領域)を明らかにした。また、分子科学研究所の石田干城博士とこの研究テーマについて共同研究を開始し、石田博士の得意とするコンピュータシミュレーションによる結果と本研究の実験結果を比較も行った。このコンピュータシミュレーションの結果との比較から、並進的な運動が重原子置換効果に影響するなど分子レベルでの描像を明らかにしている。この成果は、上述の論文とともにJournal of Physical Chemistryにback-to-back papersとして投稿している。 さらに、イオン液体の粘度における重原子置換効果が非芳香族性イオン液体でも表れることを明らかにし、重原子置換効果が与える粘度へ の影響が普遍的なことを示した。また、カチオンとアニオンをともに十原子置換した時には、その効果はそれぞれのほぼ和となることも明らかにしている。
|