2007 Fiscal Year Annual Research Report
量子ポンピングによるゼロバイアス伝導特性の理論解明とその応用
Project/Area Number |
19560001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
矢久保 考介 Hokkaido University, 大学院・工学研究科, 准教授 (40200480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 恒義 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (80002236)
島 弘幸 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教 (40312392)
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Keywords | 量子ポンピング / スピン流 / スピントロニクス / 光支援トンネリング / 転送行列法 / 非断熱プロセス |
Research Abstract |
本研究では、申請者らが開発した新しい転送行列法を用いることで、量子ポンピングによるゼロバイアス定常電流の諸性質を理論的に解明する。特に、量子ポンピングに対する断熱理論の適用限界、すなわち開放系における断熱条件を明らかにし、断熱的量子ポンピングと非断熱ポンピングの質的な差異を明確にする。また本研究では、応用上重要な大きな電荷電流や純粋スピン流(すなわち、電荷電流は完全にゼロであるがスピン流は有限であるような流れ)が、非断熱的な量子ポンピングを用いることによって極めて単純なシステムにおいても実現できることを示す。さらに、効率的な純粋スピン流(低ノイズの大スピン流)を得るための条件を明らかにし、これを実現するシステムを理論的にデザインする。平成19年度では、まず転送行列法の量子ポンピング系への拡張を行った。光支援トンネリングの研究において我々が開発したFloquet散乱を取り入れた転送行列法を拡張することで、これを実現した。特に、磁場が印加された系にも適用可能なようにアルゴリズムが開発された。また、2次元電子系における量子ポンピングによる電流パターンの計算を行った。この計算により、量子ポンピングが確かにサイドバンド成分同士の複雑な干渉によって生じていることが明らかとなった。さらに、系に不純物による不規則さを導入してポンプ電流の大きさを調べたところ、固有状態としての電子波動関数の局在長が系のサイズと同程度となる時にポンプ電流が最大となることが分った。このことは、量子ポンピングには複雑な量子干渉を誘起させるためのカオス性が必要である事を示している。
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Research Products
(31 results)