2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19560010
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
高橋 東之 Ibaraki University, 理工学研究科, 教授 (30202154)
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Keywords | 非晶質 / 燃料電池 / プロトン伝導 / リン酸塩ガラス / ガラス構造 |
Research Abstract |
リン酸塩ガラスにおけるプロトン導電性の発現を明らかにするために、種々の擬2元系リン酸塩ガラスについて合成条件ならびにアニールによる伝導度変化を測定し、以下の結果を得た。 1)ガラス試料をより低温、より短時間溶融し、これを急冷した試料ほどプロトン伝導度が増加し、リン酸鉛系ガラスにおいても阿部らによって提案されている式σ=A_o[H+]^2に従うことが示された。 2)このガラス試料を空気中において適温でアニールするとプロトン伝導度は大幅に向上した。熱分析、赤外吸収スペクトルならびに中性子回折から、ガラスへの水の吸収に伴うプロトン伝導性の増大であることが示された。 3)プロトン伝導度の温度依存性に対する考察から、ガラスへの水の吸収による伝導度増加はプロトン濃度の増加ではなく、ガラス構造中の水分子を介したプロトン移動度の増大によるものであることが示唆された。 4)リン酸塩ガラスのプロトン伝導性は測定を行ったすべての系で同様に振る舞うことが示されたが、特にリン酸鉛系ガラスへの水の吸収ならびにプロトン伝導度の増大が顕著であることが明らかとなった。これはPb-Oの結合エネルギーがガラス形成酸化物群と修飾酸化物群の中間に位置することによるガラス構造の特異性に由来すると考えられる。また、伝導度とともにガラスのFSDPに反映される中距離秩序形成が顕著になることが示された。 以上の結果から、ガラス中の水はH_2O分子、H^+(-OH基)というプロトン伝導度に対する効果が異なる2種類の形態で存在する。特に環境負荷の高いPbに変わる中間酸化物(例えばZn)により構造を制御して、化学的安定性を損なうことなく多量のH_2O分子をガラス中に導入することにより高いプロトン導電性ガラスが実現できることを明らかにした。
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