2009 Fiscal Year Annual Research Report
La酸化物超薄膜/Si界面の原子レベル誘電特性の解明
Project/Area Number |
19560020
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
中村 淳 The University of Electro-Communications, 電気通信学部, 准教授 (50277836)
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Keywords | ナノ材料 / 電子デバイス / 表面界面物性 |
Research Abstract |
本研究は、実験から得られる経験的パラメータを一切用いない密度汎関数理論に基づく第一原理計算手法を用いて、La系high-k酸化物超薄膜とSiの界面におけるナノススコピック領域の原子スケール誘電特性および電子状態を評価するものである。まず単独のLa203(0001)超薄膜について局所誘電率を評価したところ、3分子層(ML)厚以上の薄膜の静的・光学的誘電率は薄膜中心部でバルクの実験値によく一致していた。しかし最も薄い2MLの薄膜中心部においては、静的誘電率の値が非常に大きくなっていた。これは薄膜表面の緩和の影響を強く受けているためだと考えられる。一方、表面のごく近傍においては局所誘電率は低下していた。La203はイオン性度が高いため、表面近傍においてはランプリング(陰イオンがバルク側に大きく変位)が生じており、それが表面イオン性度の低下、すなわち有効電荷の低下をもたらしていることが原因である。さらに、過去の実験結果をもとにSi(001)/La203(01-10)直接界面モデルと、SiとLa203の間にSiO2結晶を緩衝層として持つモデルを提案し、価電子帯バンドオフセット(VBO)を評価した。その結果、直接界面モデルのVBOは、Si、La203膜厚に関わらず過去のVBOの実験値、計算値よりも非常に小さい値であることがわかった。この不一致は、Si層からLa203層への電荷移動により、VBOが小さくなるようにエネルギーがシフトしているためである。一方β-quartz構造を緩衝層として持つモデルにおいてはVBOの値が大きくなった。このことは、VBOは界面での局所的な原子配列の影響を強く受けており、VBOを制御のためには界面原子配列の制御が極めて重要であることを示している。
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