Research Abstract |
平成19年度の実績概要は以下のようにまとめられる。 1.これまでに,Biナノ薄膜が,Si基板上で平坦に成長することが知られていた。本研究では,第1原理計算を行いBi膜の構造を明らかにした。極めて膜厚の薄いときに観測される{012}膜では,表面原子のバックリングを伴う最安定構造と,バックリングを伴わない,準安定構造が存在することを発見した。前者は,半導体,後者は金属の電子構造を取ることが明らかとなり,この系は,金属、絶縁体転移を引き起こす可能性が示唆された。これまでに,STMの実験からは,最安定なバックリングを伴う構造が見いだされているが,今後,バックリングを伴わない構造が発見されることが期待される。 2.Pのナノ薄膜は,まだ合成されていないが,その構造を第1原理計算により,予言した。この場合は,バックリングしていない構造が最安定であり,膜厚が増加するにつれて,バンドギャップが減少し,バルク(黒リン構造)のバンドギャップに近づくことが分かった。BiとPの構造の違いは,前者がよりsp混成を起こしにくい性質を持った元素であることを考慮すると説明できることが明らかとなった。 3.Bi上にペンタセン1層が成長した場合につき予備的な電子構造計算を行った。Biとペンタセンの弱い相互作用により,電子構造に多少の変化が生じることが示唆された。
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