Research Abstract |
スピン偏極電子源の作製につき,単原子電子源(SAE)に高い正電界をかけ,先端原子を電界蒸発させて,そのサイト付近に磁性原子を収容させることを基本方針とする.それまでの研究で,Ultrasharp W TipではSAEが自己形成することを明らかにしている.さらに,当該年度の前年は,作成法の自由度をふやすべく,Blunt W tipを開始材料にしてRemolding(R)処理を事前に施し,単原子電子源の作製を試み,結果,電界増倍係数は4倍になることを明らかにした. 21年度は,まず,R処理の効果を定量的に評価した.一般に,W Tip先端の極率半径は処理履歴に依存する.したがって,R処理時の電圧はTrivialに電界を反映しておらず,今回,処理前に1nAの電界放出電流を出すために要する引き出し電圧で規格化したR電圧により電界を揃えた.R処理時の温度と規格化電圧に対する先端構造を調べたところ,上記の変数に対して一意に決まる構造が現れることを明らかにした.また,R処理後に単原子電子源作製を試みたところ,開き角約±3°の電子ビームが現れ,電流時間変化は階段状推移を示した.このことは,放出領域が原子大程度にあることを意味する.この先端の原子構造の確認を含め,FIM(電界イオン顕微鏡)の整備が望まれるが,21年度には,立ち上げに着手し,完成させた.Tip温度は73K(カタログでのHeクライオ冷却能と同程度)で,クライオヘッドから試料まで問題なく冷却できた.また,XYZ-θ可動マニュピレータを備え,立ち上げ中のエネルギー分析器と機能的にマッチするような性能を付与している.今年度,磁性原子から電界放出させる実験には至らなかったが,研究計画については,今後とも実施価値ありと考える.今後とも実験環境を整え,目標の材料創製向けた研究を続けたい.
|