2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19560030
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
高橋 正光 Japan Atomic Energy Agency, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (00354986)
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Keywords | 結晶成長 / 放射線、X線、粒子線 / MBE、エピタキシャル |
Research Abstract |
本研究は、第三世代放射光X線を用いたX線回折法・強度ゆらぎ分光法を用い、化合物半導体の分子線エピタキシー成長中に見られる動的現象を解析することを目的としている。とくに、結晶成長時に進行し、結晶成長に本質的な影響を及ぼしているステップ端や島の形状のゆらぎなどナノスケールでの「ゆらぎ型ダイナミックス」現象を実験的に明らかにすることをねらいとした。実験は、放射光施設SPring-8のビームラインBL11XUにおいて、分子線エピタキシー結晶成長装置と一体化したX線回折計を用いておこなった。使用したX線の波長は0.1377nmである。放射光のコヒーレントな成分を切り出すため、直径10ミクロンのピンホールを試料の前200mmの位置に設置した。試料にはインジウムアンチモン(001)面基板を用い、インジウムアンチモンを成長させながら、試料基板からのX線反射をCCD検出器を用いて測定した。基板表面に対するX線の入射角0.6°に対し、0.4゜から0.6°の範囲の取り出し角のX線反射を測定した。これは、最小400nmまでの表面構造を測定していることに対応する。測定レートは4秒おきで、2原子層相当量を成長させるごとに1回の測定がおこなわれたことに相当する。測定されたX線反射強度分布には、コヒーレントX線による反射に特有のスペックルパターンが明瞭に確認された。インジウムアンチモンを成長させる過程で、結晶成長にともなう表面のステップ構造の変化を反映したスペックルパターンの時間変化をとらえることに成功した。CCD検出器を用いたので、表面構造変化の速さの散乱角依存性、すなわち分散関係の測定にも同時に成功している。このような測定は、X線強度ゆらぎ分光によって初めて可能になったもので、分子線エピタキシャル成長の理解を深めると同時に、新たな成長制御技術、ひいては新しい結晶・機能材料の実現につながる。
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