2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19560034
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
中島 伸治 Shizuoka University, 工学部, 教授 (20164189)
|
Keywords | 位相回復 / X線イメージング |
Research Abstract |
前年度は、本研究室で提案した矩形開口列フィルターを用いた位相回復法(レンズを全く使用しない新しいイメージングシステム)を、レンズ結像システムによる精度の良い物体イメージングが困難であるX線領域へ拡張することを行った。その後、さらに改良を行い、物体と矩形開口列フィルター間の距離、矩形開口列フィルターと観測面間の距離を,ファーフィールド条件よりも近距離のフレネル条件に緩和する方法を考案し、その成果をアメリカ光学会論文誌に発表した。 今年度は、実際のX線が部分的コヒーレント光であるために生じる再生物体の劣化問題の解決について検討した。その結果、部分的コヒーレント光により照明された物体の回折強度分布を測定した後、別に測定したX線のコヒーレンス関数を用いて測定強度の補正を行うことで、再生物体の劣化を大きく改善できることが確認できた。この成果は論文として投稿し、来年度掲載予定である。さらに、観測面との間の距離をフレネル条件からさらに縮めた近距離場にして再生物体の解像度を上げる方法について理論的検討を行い、その方法によって、物体の解像度を照明光の波長程度まで上げることが可能かどうか、計算機シミュレーションによって調べた。その結果、矩形開口列フィルターを用いた本方法によって高解像度物体再生が可能であることを計算機シミュレーションで確認した。レンズを用いない位相回復法を高解像度システムへ適用することは,世界的に見ても今まで行われていなかった。従って、レンズを用いた高解像度物体再生が困難なX線顕微鏡への応用が期待できる成果である。この成果は論文として投稿する予定である。 来年度は、X線照明の際の直接光が物体波の中心部分と重なることによって、物体波の中心部分の情報が失われて再生像が劣化する問題について検討する予定である。
|