2008 Fiscal Year Annual Research Report
メゾスコピック系熱電素子における電子-格子系非平衡定常状態の研究
Project/Area Number |
19560044
|
Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
岩崎 秀夫 Japan Advanced Institute of Science and Technology, マテリアルサイエンス研究科, 准教授 (70168558)
|
Keywords | 熱電変換素子 / ハーマン法 / 非平衡定常状態 / 電子-格子系 |
Research Abstract |
マイクロワイヤーにおける電子-格子系非平衡状態の実験を前年度に行った。格子温度の測定は温度差を計るための温度計と試料の十分な熱平衡を保証する条件だしが極めて困難であった。ビスマスのマイクロワイヤーでの測定に引き続き、現在室温領域で既に実用化されているビスマス-テルル系のp型(Bi,Sb)2Teのマイクロワイヤーの作製法の確立、その素子の熱電物性測定と結果のまとめを行い、今後の展望についての検討を行った。この試料の融点が約600℃弱であることから、ビスマスの時に使用したパイレックスガラスの鋳型から作ることは不可能なため、やや太めのパイレックスガラスを用意しその中に粉末試料を入れて加熱しゆっくりと引きのばすことで直径10ミクロン〜50ミクロンのマイクロワイヤーの作製ができることを確認した。作製の際素子表面の酸化などには注意を払い、EPMAによる分析から酸化の影響のない素子ができていることを確認した。 この素子を使って前年度に作製し熱電物性の評価が高精度で可能であることが確かめられている評価装置で熱電物性の測定を行った。得られた性能指数は最大でZT=0.911(300K)でバルクの素子と同程度の高い値が得られた。ただし、ZTには素子によるばらつきがあったため、抵抗率との関係を詳しく調べた。結果は高抵抗率の素子では小さな値、抵抗率が小さくなるにつれ全体としてZTが大きくなっていく傾向が確認され、素子内の結晶軸の配向性が重要な役割をもつことが明らかになった。 この研究過程で、マイクロワイヤーを旨く使うと、高性能な単結晶を育成することが明らかとなり、今後の新たな研究課題として出てきた点を指摘しておきたい。
|