2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19560049
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Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
木暮 嘉明 Teikyo University of Science & Technology, 医療科学部, 教授 (20016124)
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Keywords | ナノ流体 / ナノ粒子 / 熱伝導率 / 分子動力学 / 希ガス液体 / 表面張力 |
Research Abstract |
物質の熱伝導性は機械的特性と共に材料の最も基本的な特性のひとつである。ナノ流体は水やエチレングリコールに銅や酸化銅、アルミナなどのナノ粒子を分散させたもので、僅か0.3%のナノ粒子が40%も熱伝導率を増加させることが実験的に知られている。本研究はその微視的な機構を明らかにすることが目的である。本年度はこれまでに構築してきたFORTRANコードを活用し、分子動力学シミュレーションを行った。モデルは約15800個のアルゴン原子の液体の中央部に約1400個の原子で構成される銅のナノ結晶を配置したものである。アルゴン原子間の相互作用はレナード・ジョーンズポテンシャルで、銅原子間の相互作用は我々が開発した原子挿入法(EAM)ポテンシャルを用いて表した。初期条件はOKでアルゴンも銅もfcc構造の結晶状態に原子を配置しておく。系の温度を上昇させてゆくと融点の低いアルゴンが液体状態になり、ナノ流体のモデルが実現した。この状態で液体-固体間の熱振動エネルギーの移動や液体分子の変位を追跡した。現実のナノ流体に比べると原子数も計算時間も桁違いに小さいが、ナノ流体の熱伝導を実空間で再現したことが大きな成果である。一方、実験的にナノ流体の機構を明らかにするため、毛管現象および固体表面での滴の形状観察を利用した、表面張力の測定も試みた。ナノ流体ではナノ粒子近傍での液体原子のミクロな対流やブラウン運動が関与していると考えられているが、明確な証拠はない。液体の表面エネルギーが関与する表面張力にその影響が表れることは考えられることである。ナノ流体は半導体や原子炉の冷却といった実用化が進んでいる反面、その本質が明らかになっていない問題であり、熱伝導の研究分野の重要な研究課題である。本研究はシミュレーションと実験の両面で新たな研究手段を開発し、将来の研究指針を与えるものとなった。
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Research Products
(5 results)