2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19560050
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
金子 敏明 Okayama University of Science, 理学部, 教授 (40158853)
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Keywords | 粒子線 / クラスターイオン / 電子励起 / エネルギー付与 / 平均電荷 |
Research Abstract |
この研究の目的は、複数原子イオンを固体標的に入射したときに誘起される電子励起過程に出現する非線形効果を理論的に調べることである。非線形効果とは、N個の同種粒子を含む複数原子イオン照射下で出現する電子励起効果が、同速の単一イオン入射下でのそれのN倍にならないことを指す。これは、複数原子イオン群の時間・空間的相関や束縛電子の遮蔽効果が電子励起に深く関わるからであり、入射速度や標的膜厚に依存する。この研究で扱う電子励起過程は、イオンのエネルギー損失、2次電子収率、イオンの平均電荷、標的原子の電離などである。 今年度は、エネルギー損失と平均電荷に関して珠の実績を得た。入射エネルギー3MeVのC_3^+クラスターが尿素薄膜を通過後に解離したイオンの平均電荷とその空間構造依存性を調べた。これは、日本原子力研究開発機構高崎量子応用研究所(以後、高崎研)のグループによって実験テータが初めて報告されたため、筆者は、高崎研のグループとの討論を経て理論面から解析をすすめた。その結果、C_3^+が線状構造の方が三角構造よりも平均電荷が大きいこと、および、線状構造では両端のイオンの方が真ん中のイオンよりも平均電荷が大きいことの2点について実験結果と一致した。この理論解析には、固体標的中での各イオンの平均電荷をわれわれのクラスター平均電荷理論で評価し、入射粒子間のクーロン爆発のほかに標的物質の電子分極による抵抗力(ウエイク力)を新たに導入した。この成果は、共著論文として発表された。このほか、遮蔽効果に関運して、奈良女子大学のグループと共同で、高速陽子および高速中性水素照射下での炭素薄膜の前方および後方から放出される2次電子収量の実験データを解析して共著論文を作成した。また、標的原子の多重電離についても解析を進めた。
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