2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19560050
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
金子 敏明 Okayama University of Science, 理学部, 教授 (40158853)
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Keywords | クラスターイオン / 電子励起 / エネルギー損失 / 荷電状態 / クーロン爆発 / 電子分極力 / 2次電子 / クラスター効果 |
Research Abstract |
今年度は、前年度の研究を発展させるべく、クラスターイオン照射下でのエネルギー付与、電荷分布および二次電子放出における「クラスター効果」に関する研究を進展させた。エネルギー付与に関しては、媒質電子の分極力(ウエイクカ)を新たに取り入れて、1原子あたり0.5〜1MeV程度の炭素クラスターイオンが炭素薄膜を通過したときのエネルギー損失量を計算した。その結果、単一炭素イオンに対する相対エネルギー損失値は、粒子数Nの増加とともに減少するが、N=3と4では差異がないことがわかった。これは、工藤氏らの筑波大学グループによる実験データと非常によく一致している(論文を作成中である)。この結果は、エネルギー損失における「負のクラスター効果」の存在を明確にする意義深いものである。また、平均電荷に関して、電子捕獲と電子損失の断面積から電荷分布を導出する理論の構築に着手し、日本原子力研究開発機構高崎量子応用研究所の斎藤氏のグループが測定した1MeV炭素イオンの電荷分布を、我々の理論でほぼ再現することができた。今後は、クラスターとしての特徴をこの理論に取り込む。この電荷分布と、2原子炭素クラスターのクーロン爆発での散乱角、核間距離との相関も斎藤氏らと共同で解析している。さらに、二次電子放出に関しては、素過程研究の立場から奈良女子大学の小川氏らと共同で、二次電子収量における励起電子の平均自由行程やカスケードの効果、入射荷電状態の影響などを調べ、発表した。また、工藤氏ら実験的に報告したが未解決である「前方での二次電子収量の低下」に関して、定性的には解釈できたので、今後は、定量的な説明を目指す。
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