2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19560050
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
金子 敏明 Okayama University of Science, 理学部, 教授 (40158853)
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Keywords | クラスターイオン / 電子励起 / エネルギー損失 / 二次電子 / クーロン爆発 / 電子分極力 / クラスター効果 |
Research Abstract |
今年度は、まず、クラスター衝撃下での二次電子放出率の弱線形性について研究した。1原子あたり0.5MeVの入射エネルギーでCn+(n=1-8)イオンを炭素薄膜に照射して、放出された二次電子の収率Y(n)が粒子数nに対して線形よりも弱い依存性Y(n)/Y(1)=1+a(n-1)(a=0.2-0.4)を示す実験データが工藤ら(筑波大)によって報告されていた。この研究では、入射粒子による励起電子の生成、励起電子の出口表面までの伝播、表面ポテンシャルからの脱出、という従来の「3段階過程」に加えて、励起電子が出口表面まで伝播する間にクラスター構成粒子による散乱の抑制効果を取り入れた結果、a=0.2-0.4を示すことができた。次に、クラスターのエネルギー損失に関する弱線形性について研究した。1原子あたり0.5MeV程度の入射エネルギーでCn+(n=1-6)イオンが炭素薄膜を通過したときのエネルギー損失量S(n)の単原子イオン入射のエネルギー損失量S(1)に対する比がS(n)/S(1)=0.94程度まで低下して「負のクラスター効果」を出現させることを示した。この計算では、薄膜中でのクラスター粒子間のクーロン爆発、クラスターの平均電荷の低下、電子分極によるクラスターの変形の効果を取り入れた。ただし、小角多重散乱の寄与は小さかった。クラスターの形状は原子間距離が0.127nmの線状構造を仮定して、クラスター軸と進行方向のなす角を変えて分子動力学法で計算した。上記のエネルギー損失比の値は、実験データとよく一致することがわかった。また、C60フラーレンイオンに対する炭素の阻止能を、イオンの速さがv=0.4-30Vb(Vbはボーア速度)の範囲で計算した結果、クラスター入射に特徴的な速度依存性を見出した。
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