Research Abstract |
本年度の研究では,放電パルス数カウントによる新しいマイクロ放電加工のモニタリング手法を開発し,放電パルス数と全放電加工エネルギーが金属除去量ならびに工具電極消耗量と良い相関を示すことを確認した. 1.工具電極消耗量は,工具電極と被削材の組合せや加工条件により異なるので,加工量を推定するためには工具電極消耗量を正確に推定する必要があるが,本モニタリング手法により電極消耗量の推定が可能となり,その結果精度の高い加工が行えるようになった. 2.材料除去量が増加すると当然,放電加工パルス数と全放電エネルギーは増加するが,同一の加工条件であれば,平均放電エネルギーは一定である. 3.工具電極消耗量を正確に推定することは,棒状の単純形状の工具電極を使用して加工を行う創成マイクロ放電加工において特に重要である. 4.従来,放電加工の容易性を判断する基準として,被削材の熱伝導率(λ)と融点(θ)の積,λ・θ積が提案されていたが,本研究では,これに被削材の電気抵抗ρを加えたλ・θ・ρ積を提案した.λ・θ積では,放電加工の容易性は加工時間を尺度に論じられてきたが,加工時間は,工具電極と被削材の溶着による電気的な短絡,キャビテーションなどに大きく依存するため,加工時間を放電加工の容易性の尺度とすることは適切ではない.例えば,λ・θ・ρ積によるとアルミニウムは,最も放電加工が容易な材料と判定されるが,その加工時間は他の材料よりも長い.これは,工具電極と被削材の溶着などが影響するためである。放電パルスカウントによるモニタリングを試みた結果,同一の加工量の場合,アルミニウムは最も少ない放電パルス数で加工することができた.これにより,λ・θ・ρ積が,放電加工の容易性を判断する指標として有効なことが示された.
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