Research Abstract |
本研究は,ナノデバイスを実現する上で必要な「50nm以下の加工スケール」,「精密位置制御」,「高アスペクト比加工」を満たす加工技術を開発するため,カーボンナノチューブ探針を用いた高アスペクト比ナノスケール加工法の可能性について検討を行ったものである. 以下に得られた結論を述べる. 引き上げ法による簡易かつ量産性のあるカーボンナノチューブ探針の作製条件を検討した.溶媒にイソプロピルアルコールを用い,多層カーボンナノチューブ濃度0.05mg/mL,印加電圧14V,引き上げ速度14μm/sにおいて,作製率70%と高確率でタングステン探針先端から1本のカーボンナノチューブが突出したカーボンナノチューブ探針の作製が可能であった.引き上げ法により作製したカーボンナノチューブ探針を用いて,バイアス電圧,トンネル電流および加工時間と加工形状の関係から高アスペクト比加工条件を検討した. カーボンナノチューブ探針を用いた加工は,タングステン探針を用いた加工の穴径を1/10以下に微小化した.Au薄膜においては,バイアス電圧3V,トンネル電流4nA,加工時間90sで,加工深さ286nm,穴径63nm,アスペクト比4.5の穴加工が実現し,従来のタングステン探針に対し,45倍向上した.HOPGにおいては,バイアス電圧4V,トンネル電流1nA,加工時間180sで,加工深さ38nm,穴径14nm,アスペクト比2.7の穴加工を実現した. STM加工に伴うシリコン単結晶の微細組織変化を検討した.カーボンナノチューブ探針を用いた穴加工では,加工穴の周辺にはタングステン探針で観察された転位ループを含む格子欠陥層は観察されず,加工に伴う加工部の組織変化は見られなかった,以上の結果と,加工における電圧閾値の存在および加工部表面の周辺に変化がなかったことから,STM加工の原理は電界蒸発によるものと結論付けられた.
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