2008 Fiscal Year Annual Research Report
金属フタロシアニン添加ナノコンポジット高分子絶縁材料の耐トリーイング性の向上
Project/Area Number |
19560310
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山野 芳昭 Chiba University, 教育学部, 教授 (90134791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯塚 正明 千葉大学, 教育学部, 准教授 (40396669)
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Keywords | LDPE / 電気トリー / 添加剤 / ナノフィラー / フタロシアニン |
Research Abstract |
耐トリーイング性に優れた芳香族添加ナノコンポジットLDPEの設計指針を確立させることを目標に、前年度に引き続き、耐トリーイング性に優れたナノコンポジットLDPE(LDPE;低密度ポリエチレン)に焦点を当て、金属フタロシアニンとナノフィラーが耐トリーイング性向上に果たす機能について検証を行った。本年度に得られた成果を以下に番号順に示す。 1.金属フタロシアニン(M-Pc)として4種類(Mg, Cu, Fe, Ni)の中心金属のものそれぞれを添加した試料について耐トリーイング性を評価した。評価を行った項目は、トリー進展速度である。最も安定的に高いトリー発生電圧を示すNi-PcをLDPEに添加したもの、およびそれにさらにAl_2O_3ナノ粒子を添加したものを用いて、交流印加電圧とトリー発生開始時間(電圧印加からトリー発生までの時間)との関係を測定し、その結果をワイプル確率紙上にプロットして評価を行った。その結果、最も効果のあった添加濃度においては、トリー発生開始時間は無添加試料と比較して約7〜8倍に伸びた。すなわち、トリーの進展を抑制する効果が認められた。 2.Ni-Pcのみの添加試料の場合のトリー発生開始時間は無添加試料とほぼ同じであり、Ni-Pc単体ではトリーの進展を抑制する効果がないことがわかった。 3.Al_2O_3ナノ粒子のみの添加試料の場合のトリー発生開始時間は、無添加試料と比較して、トリー発生開始時間が約6倍程度長くなることがわかった。 4.1000倍程度の高倍率の光学顕微鏡により、試験試料をフィルム状にして透過光にて観測したところ、(Ni-Pc+Al_2O_3)試料の場合は、(Ni-Pc)試料と比較して、試料内部でのNi-Pc微結晶の析出量が少ないことがわかった。このことは、ナノ粒子が存在する試料においては、ナノ粒子表面がNi-Pcを吸着する効果があることを示している。またLDPE中に分散しているNi-Pcの微結晶自体はトリーの発生自体を抑制する効果はあるが、発生したトリーの進展を遅らせる効果はなく、Al_2O_3ナノ粒子の表面にNi-Pcが吸着して初めて効果を発揮するものと理解できる。
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