Research Abstract |
アモルファス炭素薄膜(以下,a-C : H薄膜と呼ぶ)の化学ドーピング法による伝導度制御において,ドーピングの効果は,その膜構造に強く依存することが,前年度の研究で明らかになったが,今年度は,ドーピング条件の違いによる光学的特性および電気的特性の変化について調べ,ドーピングメカニズムを明らかにすることに重点をおいて研究を実施した.具体的には,スパッタリング法を用いて,比較的膜中に水素を多く含むa-C : H薄膜を合成し,その膜について,化学ドーピング法を用いてヨウ素をドープしたときの薄膜の物性変化を調べた.ドーピング条件については,ヨウ素蒸気分圧,ドーピング温度,ドーピング時間をパラメータとして実験を行った.その結果,ヨウ素蒸気の分圧が高いほど,薄膜の光学ギャップは減少することが明らかになった.また,ヨウ素蒸気分圧一定の条件では,ドーピング温度が高いほど光学ギャップの減少度合いが大きくなることが明らかになった.さらに,ドーピングによる光学ギャップの変化は,ドーピング開始直後が最も大きく,時間が長くなると緩やかに減少する傾向が見られた.以上の結果から,膜中へのヨウ素ドーピングは,薄膜がヨウ素蒸気に曝されることによって,ヨウ素分子が膜中に拡散することによって引き起こされるものと推察される.また,ドーピング時間を十分長くとった場合には,ヨウ素蒸気分圧,ドーピング温度の違いに関わらず一定のヨウ素ドープ量で飽和する傾向が見られることから,最終的にドーピングできるヨウ素の量は,膜質依存し,より容易に拡散できると考えられる密度の低い膜ほど,ドーピングの効果が大きいことが考えられる.本研究ではヨウ素ドーピングによって光学ギャップは2.6eVから0.9eVへの減少が確認された.さらに,電気伝導度も4桁増加することが明らかになり,ヨウ素ドーピングがa-C : H薄膜の伝導度制御に有効であることが示された.
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