Research Abstract |
金錫(AuSn)共晶はんだは,降伏強度が大きいので耐疲労性に優れており,クリープも小さいため,光デバイスの実装など高信頼性が要求される接合に用いられている.AuSnの堆積には,(1)真空蒸着,(2)プリフォームはんだの搭載,(3)メッキ,(4)ペースト,などが開発されている.AuSnペーストを用いた方法は,最も低コスト化か期待できるが,微細AuSn粒子表面は酸化膜で覆われているため,表面の酸化膜を除去しはんだが濡れ広がるのを化学的に助けるフラックスが不可欠であった.また,リフロー後に残ったフラックス残渣は基板に対する強い腐食性を持つため,その除去のための洗浄工程が必要であった. 本研究では,無洗浄・狭ピッチ対応などの要求を満たす可能性のあるはんだバンプ形成プロセスとして,水素ラジカルを用いたプラズマリフロー法に着目し,ガスアトマイズで作製した5μm以下の微細AuSnはんだ粒子に適用した. まず,窒素や水素雰囲気中でリフローした単一AuSn粒子(直径約1μm)のNi薄膜上での濡れ広がりについて,水素ラジカル用いた場合と比較検討した.窒素雰囲気や水素雰囲気でのリフローでは,AuSn粒子の一部分しか濡れ広がらなかったが,水素ラジカルを照射した場合には粒子が十分に濡れ広がるのが観察された.すなわち,水素ラジカルを照射することによってフラックスレスでリフロー可能であることを明らかにした. 次に,これらの結果をもとに直径5μm以下のAuSn粒子を用いて水素ラジカルリフローを行い,直径約100μmのはんだバンプを実現することができた.ダイシェアテストを行い,その機械的強度を測定した.その結果,平均約73gf,およそ140MPaの接合強度が得られた.ダイシェアテスト後の破断面を観察すると,バンプ下地金属(UBM:Under-Bump Metallization)(Au/Ni/Cr)の下から破断していることがわかり,AuSn粒子がUBM上に十分濡れ広がっていることがわかった.本プロセスは,フリップチップ実装や封止に有用であると考えられる.
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