Research Abstract |
本年度は,研究目的であるバンクマシンの音響信号情報を用いた疲弊札判別システムの構築に向け, 1. 明確な紙幣音響特徴量の算出方法 2. 実時間処理を意識した判別アルゴリズムの確立の2点の達成を目指す研究計画であった. 上記の目的を達成するために,教師あり自己組織化特徴マップ(教師ありSOM)を用いた,音響エネルギーパターンからの紙幣疲幣度推定法を考案し,実紙幣を用いた大量音響信号データへ本手法を適用し,その性能検証を中心に研究を進めた.実験結果から,研究計画に対応する以下の2つの知見が得られた. 1. 紙幣の音響エネルギーパターンから,該当紙幣の疲幣度をおおよそ正しく推定できることが明らかとなった.これより,音響エネルギーに基づく特徴量は,紙幣の疲幣度を明確化する特徴であるといえる. 2. 教師ありSOMを用いることで,音響エネルギーパターンのユークリッド距離の計算のみで疲幣度の推定を短時間に行うことができる.本手法は,処理時間の面から実装化に有効な手法である. さらに,研究計画の項目1に対して,紙幣伸張音特徴についても検討した.これは,バンクマシンの紙幣搬送たるみを利用した新たな音響信号発生機構であり,従来研究で使用する摩擦音に基づく紙幣通過音に比べ,明確な音響特徴として有望である.本年度は伸張音発生機構を試作し,基礎データの計測を終えた.研究計画の2についても,音響信号特徴から疲幣度を判別するための効率的なSOMの構成方法について基礎研究を行った.これについては,1.SOMの特徴マップの有効利用度,2.判別エラー率の2つの評価量を用いて,SOMの構成パラメータを探索する手法である. 以上の結果をまとめ,雑誌論文2件,国内学会6件,国際会議2件の発表を行った.また,1編の論文を現在投稿中てある.
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