Research Abstract |
本研究では,(A)保守性を低減化したロバスト安定性解析手法の構築,および,(B)外乱の影響を受けない異常検知フィルタの設計方法の確立についての研究を実施した.(A)については,これまで得られていたロバスト安定性解析の方法を利用して,新たにロバスト制御設計方法を構築しその手順を明らかにした.提案手法の有効性は例題によって検証し,従来の手法に比較して保守性を低減化した形でロバスト制御系が設計できることを確認した.また,(B)については,これまで得られていた結果を発展させ,実用に有用な手法を開発した.昨年度までに,連続時間SMO(Sliding Mode Observer)を利用したFDIフィルタの設計方法を提案していた.これは,Edwards(Automatica,2000)らによる方法を外乱の影響が考慮できる形式に改良した方法であり,外乱に不感なFDIフィルタを設計するものである.計算機シミュレーション結果によれば,制御系におけるセンサ異常をほぼ瞬時に推定することができることを確認している.これに対して,本研究によって,センサの観測異常に対して有効なフィルタの設計問題を考え,次の結果を得た.(1)システムに加わる外乱の影響を除去できるFDIフィルタの設計方法を提案した.その際,システムに加わる外乱としては,低周波数帯域から高周波数帯域までの,すべての周波数帯域の外乱を想定した.さらに,低周波数外乱の影響を除去するためには外乱オブザーバの併用が有効であることを明らかにした.(2)実際のシステムに適用できるように,離散時間形式のFDIフィルタの実現方法を提案した.(3)上記の手法の有効性は,例題に対する計算機シミュレーションによって検証した.以上の成果により,外乱除去性能として既存のどの方法よりも優れた性能を示すFDIフィルタの設計方法が提案できた.
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